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図書館にて

 今日は、二人で出された宿題をするためにここへ来た。  夏休みの課題は思った以上に出されていて。  一緒にやろうと、浅井が提案してくれたのだ。  と言っても、浅井はいつも学年で五番以内に入っているほど、勉強ができる。  俺は勉強は出来ない方ではないけれど、出来る方でもない、いたって普通な成績なわけで。  当然分からないところを、浅井に教わる事になる。 「どこが分からない?」  俺がシャーペンを止めるとすぐに気が付いて、向かいに座った浅井は声を掛けてきた。 「ここ」  そうシャーペンの芯で指し示したのは、英語の宿題。  文法問題の、仮定法。  過去形を使うとか、過去完了を使うとか、訳分かんない。  授業を聞いた時もハテナが浮かんでたくらいだから、こうして一人で解いて分かるわけがないのだ。 「ああ、そこは引っかかる人多いよね」  そう言って浅井は、丁寧に図解しながら教えてくれた。  さすが学年トップ、授業で分からなかったのに、浅井の説明を聞くと分かったような気になってくる。 「じゃあこれは、過去形?」 「正解」  一つ分かっただけ、けれどふわりと笑う浅井を見ていたら褒められたような気がして、嬉しさが滲み出た。  すると何故か浅井は笑顔を引っ込めて、「今度、誰もいない所で勉強しようか」と言ってくる。 「そんな顔見たらキスしたくなるのに、ここじゃ出来ないから」  声を潜めてそう言った。 「だからほら、そういう顔。今はしないで」  困ったように言われても、俺は自分がどういう顔をしているのか当然だが分からない。  だから首を傾げながらも、再び目の前の問題と睨めっこを再開させた。 「疲れた?」 「いや、そうじゃないけど……」 「そろそろ外に出ようか」  最初から、午前は図書館、午後はお昼を食べつつぶらぶらと出歩くと決めていた。  俺がしょっちゅう目を擦っているのを見て飽きたか、眠いとでも思ったのだろう。  眠くはない、疲れてもいない。  確かにずっと問題と睨めっこをしていたら嫌にもなってくるが、まだ俺の集中力は切れていなかった。  ただ……瞼が、下がるのだ。  瞼の上に何かを乗せられているように重くて、何度擦っても直らなくて。  傍から見たらそりゃ、眠いと思われても仕方がない。 「近くの……ファミレスにする? それともあそこのカフェとか、ラーメン屋とか……」 「ファミレスでいいよ」 「了解、でもその前に……」  来て、と手招かれ、俺と浅井は図書室の横、普段は誰も来ないだろう所に足を踏み入れた。 「こんな所に、何があるんだ?」 「ん? 内緒」  少し奥の、木が植えられている所に出た。  こんな所、来ようとしなければ来ないし、例え迷ったとしても来ることなどないだろう。  そんな場所に来た浅井は、振り返って俺の顎を掬った。

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