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キス

「な、なにっ」 「何って、さっきお預け食らったから。キス、したい」 「浅井って……キス魔?」 「鳴海にだけだよ。今まで我慢してたのに、付き合ってるって、しても良いんだって思うと、所かまわずしたくなる」  腰に添えられた手に力を込められて、距離を縮められた。  だからこんな所に連れ出したんだ、とそれがキス目的だと知ると、いつも飄々としていて、告白はされるのに付き合った姿は見たことがなかった浅井が、まさかこんな欲望をぶつけてくるなんてと思うとおかしくて、思わず笑みが零れた。 「何笑ってるの」  そうやって不貞腐れる顔も、学校では見たことがない。  本当に……本当に、俺の事、好きでいてくれてるんだ。  未だ現実味のないそれが、とても、とても、嬉しかった。 「……っ!」  そんな幸せを噛みしめている俺の唇を、さっと浅井は奪った。  固まる俺に、してやったりといじわるな視線を向けてくる。  悔しい、けどその誰にも見せない、俺だけに見せる表情を、もっと見たい。  そう思っていたら、俺の手は勝手に求めるように浅井の背中に回っていた。  昨日より強引で、余裕のなさそうな浅井。  段々体の力が抜けてきて、強張っていた顔の筋肉も緩んでいく。  すると、何やら温かなものが唇に触れた。  それはぬめりとしていて、俺の薄く開いた口から、入ろうとして。 「……っつ、今、舌……!?」 「入れるって、言ったでしょ?」 「でも、いつかって……」 「……嫌だった?」 「そうじゃない、けど」 「そんなにギュッとされて、必死に受け入れる姿を見せられて。煽られない方が、どうかしてると思うよ?」  そう言って浅井は、キスを再開させる。  入ってくる舌は俺の舌と絡んで、ピリリと何かが駆けた気がした。  くちゅりと、卑猥な音が漏れる。  その音が鳴るたびに出そうになる声を、必死に押し殺す。  女じゃないんだから、声なんて出したら引かれるかもしれない。  そうでなくてもここは外、抑えなきゃいけないのに、快感を引きずり出すように浅井は優しく、でも探るように、舌で俺を翻弄させた。 「はっ……っつ」 「……ここまでにしようか。これ以上やったら、止まらなくなるから」  もう、声を抑えきれないかもしれない。  切羽詰まったその状況を知ってか知らずか、浅井は漸く口を離した。  俺は、浅井との昨日のキスが初めてだった。  だからキスをしている時、呼吸が上手くできない。  一瞬離された口からしか短く吸えなくて、離された今、酸素を求めて口をパクパクとさせていると、浅井はそっと俺の髪を撫でてきた。  その手にあやされているうちに俺も落ち着いてきて、胸板に付けていた顔を上げる。

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