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「何を探してんの?」 「いや…、その…。  ここならあると思ったんだが…」 「俺はここの常連だから、大抵のものを見つけられる。  教えてくれたら案内するし」  見上げた瑠維に忍の表情が和らぐ。 「いいのか?  お前が必要なものを揃えてからで構わないのに…」 「遠慮すんなよ。  この店に当たりつけてんなら、手間なんかじゃない。  なぁ、教えてくんないと拗ねるぞ、俺」 「…………………っ。  わかった、教えるから、そんな表情をするな…。  襲いたくなる…」  前髪を下ろしているせいか、いつものカチコチした雰囲気と違い、感情を幾分オープンにしていて表情が柔らかい。 「ば………、馬鹿…っ。  変なこと言うな…っ」  真っ赤な顔で瑠維がアワアワしているのを、買い物途中のご婦人がたがそっと伺い見る。 『ねぇ、あの二人、なんかいい雰囲気よねぇ?』 『背の低い方の子って、どっちなのかしら…。  中性的な服装だから、ハッキリわからないのよねぇ…』 『微笑ましい若夫婦って感じだけど、男性同士だったら…。キャ…』  あらぬ想像をして萌え転がる女性方の囁きは、二人の耳に届かなかった。

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