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会計を済ませてから向かったのは呉服屋だった。
忍が探していたのは、反物だったから…。
「…?
珍しいな、忍が着物を誂(あつら)えたいなんて。
なら、呉服屋に任せるんだろ?」
「いや、瑠維がいいんだ」
「へ………?」
小首を傾げると、忍がフワリと笑う。
「元々、着物を何着か持ってたんだが、着心地が良くなくてな。
瑠維が作った服の着心地は全部いいから、着物も作って貰おうかと思ったんだ。
どうかな」
「…………え?
俺に縫わせてくれんの?」
店員から反物を出して貰いながら、瑠維は目を見開いた。
「当たり前だろう?
お前が縫った服の着心地は、どんな服も敵わない。
ましてや、特別な時に着たいものなら尚更だ。
瑠維以外考えたくない」
「……………っ!!」
手に持った反物が膝に落ちる。
「……………っ、なっ、なっ、何言ってんだよ、ばっ、ばか…っ」
頬を染めて畳にのの字を書く瑠維。
店員も、畳の上で忍の言葉と瑠維のオトメンっぷりに萌え転がった。
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