8 / 262

『着物と袴…、それと、揃いで夏の浴衣を作ってくれるか?』  そう忍は言って、反物を幾つも選んでいった。 「俺とお前だけで作れば、アイツが拗ねそうだな。  玲の分もか…」  クスクス笑い、二人で反物を選ぶ。  そういった時間も、瑠維にとって至福の時間だ。  忍が穏やかに微笑み、瑠維を魅了する。 『何だよ、もう…っ。  こんな蕩けそうな顔されたら、どうにかなっちゃうって…』  ドキドキする胸を必死で抑え、肌の色に合わせて布を選んでいく。  反物も帯も、上質のものばかりが瑠維と忍の間に積み重なる。  二人が自宅で寛ぐときの服やパジャマなら、沢山作って来た。  普段は着ない特別な服を仕立てることができる…。  なんて…、なんて幸せなのだろう………。  襦袢用の布まで揃えたため、布と反物が山のようになり、とても持ち運べる量ではなく、家への配達を頼む事にして二人は呉服店を後にした…

ともだちにシェアしよう!