11 / 262
・
駐車場を横切り、車へ向かう。
忍はドアを開けて助手席に瑠維を座らせた。
「あ、ありがと…」
「どういたしまして」
恭しく、だが、さりげない動作に、植え込みの陰から覗いているウェイトレス数名が声にならない悲鳴を上げた。
『キャーッ!!
なに!?見た!?今の見た!?』
『さりげなくドアを開けたり、恭しすぎっ!!
確か厨房の主っていいとこの坊ちゃんだったわよね?
じゃ、あの人執事!?
禁断の主従の恋~っ!!!?』
テンションMAXの彼女達が覗いているとはつゆ知らず、車内の雰囲気は何とも甘々だ。
「どうした?
なんだか顔が赤いな。
疲れでも出たか?」
前髪をかきあげ、瑠維の額に忍の額が重なる。
「ひあ………っ!!」
目の前に迫った忍の顔に瑠維は動悸が激しくなり、覗き見ていたご婦人方のボルテージを一気に上げた。
『キャーッ!!』
『デコチューよ、デコチューっ!!』
『いやぁっ!!
主ったら、真っ赤な顔で可愛いっ!!』
声にならない声で興奮しているウェイトレスの後ろで、チーフが再び大量の鼻血を噴いていた…。
ともだちにシェアしよう!