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「なっ、なんで?  俺、面倒かけたのに怒ってもいないなんて…っ」 「面倒?  気絶したのを運んだのを、面倒かけたなんて思ってるのか?」 「うん」  即答する瑠維を腕枕してやりながら、不思議そうに笑う忍。 「言ったろう?  役得としか思わないと。  逆に聞くぞ。  俺や玲の食事を作ったりするのを、瑠維は面倒だと思うか?」 「そんなの、思うわけない」  即答する瑠維に目を細める。 「俺達も同じだ。  日々お前が愛おしくなって仕方ないのに、面倒だなんて思う訳なんかない。  バスルームからここまで連れて来るくらい、何でもないんだ。  俺だけじゃない。  玲もだからな?」 「…………っ」  まるで駄々っ子に言い聞かせるように、忍は優しく囁く。 「食事も、洗って糊付けした服も、瑠維の手がかかったものでないなら駄目なんだ。  それがなければ俺は生活が成り立たない。  他の誰にも代われない。  瑠維以外は意味がない。  そんな大事な存在なのに、面倒だなんて思う訳がないだろう?」 「…………っ」  普段は見せない甘い表情に、瑠維の心臓はバクリと跳ねた。

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