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 結婚してから、初めての玲の誕生日…。  何処に行こうか、どうしようか…。  なんとなく手持ち無沙汰な手を組み、小首を傾げてみる。  人が多く集まる場所は好ましくないような気がする。  二人きりで出掛けると、途端に玲は番犬になってしまうからだ。  暫し思案していると、奥から玲が歩いて来た。 「瑠維、出掛けようぜ」 「へ………?」 「ババアがお前に会わせろって煩えんだよ。  悪ぃけど、付き合ってくれ」 「いいよ。  でもさ、お義母さんのことをババアなんて言っていいのか?  俺が同じ事を母さんに言ったら、きっと半殺しにされちゃいそうで怖いけど」 「いいんだよ。  最近我が儘になりだしたから、少し分からせねえと」  心底行きたくないという表情で愛車の鍵を手に取る。 「そうかなぁ…。  式の後にも何回か会ったけど、すっごく優しくて綺麗なお母さんだったのに…」 「そんな事ねえよ。  単なる厚塗りババアだし。  ほら、行くぞ」  ガレージに向かう玲の後に続き、瑠維もリビングを後にする。  二人っきりで出掛ける先は、どんな事が待ち受けてるのだろうか…。

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