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 短い夏の名残りの風の中、車は山の手の住宅街を抜けていく。  玲の実家である小鳥遊家に向かうのは、これで何度目だろうか。  いつ訪れても、瑠維の事を温かく迎えてくれる小鳥遊家の者たちを、瑠維自身も好ましく思っている。  ただ、そこまで歓待されて良いものなのかと、時折不安になることもあるが…。 「心配すんな。  お前が可愛くて仕方ねえだけだ。  こないだ行った時だって、二人でガールズトークみたいになってただろ?」 「ん…」 「俺の嫁になった事を申し訳なく思ったり、変な引け目を持ったりするのもやめろよ?  お前は俺の嫁なんだから、でかい顔しときゃいい」 「…………うん…」  何となく心にあるものを感じ取り、玲はいつも気遣ってくれる。  大雑把に見えて意外に気遣いを見せてくれるのは、繊細な作業が要求される外科医だからなのかもしれない。  こうして気にかけてもらえる度、擽ったい気持ちになる。 「ありがとう、玲」  はにかんで笑うと、蕩けそうな笑みを返してくれた。

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