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立派な屋敷森に囲まれた屋敷は、瀟洒な洋風建築だった。
元々は和風建築だったのだが、先代夫妻が足を傷めたことをきっかけに洋風のバリアフリーに新築したのだという。
ゴテゴテした装飾がない屋敷は、上品だけれど気詰まりな感じもしない。
何と言うか、居心地が良いのだ。
ガレージの前に着くと、心得たようにシャッターが上がる。
玲はバックギアに入れて片手でハンドルを操作し、左手を助手席にかけた。
「……………っ」
三十代の匂うような色香を滲ませた玲の顔が間近にきて、心臓が一瞬跳ねる。
シートを掴むしなやかで長い指、少し筋の浮いた甲。
そこから伸びる腕、くっきり浮いた喉仏。
整った顔立ちに柔らかい髪…。
そして、柔らかなコロンの香り…。
『なっ、なんでこんなエロいの駄々漏れにしてんだよ…っ。
反則じゃんか…』
そんなに背が伸びずに華奢なままの自分と違い、玲は大柄で日本人離れしている。
なのに間延びした顔ではなく、整った顔立ちなのだ。
『なんか、ずるい…』
自分が欲しいと思っているものを揃えている男…。
頬を膨らましていると、車を停めた玲が不思議そうに瑠維を見た。
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