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周囲を睨みながら玲が瑠維を抱きなおした。
「俺達は離れの客間を使うからな?
絶対お前ら来るんじゃねえぞ。
覗いたら、ただじゃおかねぇ…。
ほら、瑠維、お休みって言っとけ」
「うん…。
おやしゅみなしゃ…」
「「お、おやすみなさい…」」
フニャフニャと笑う瑠維に、一同がコクコクと頷いた。
怒りの気を振り撒きながら歩いていく玲の姿が廊下の向こうへ消える。
時折、「れいぃ?」「きいてゆ?」という瑠維の声が聞こえてくるが、あえて聞こえないことにした。
離れに明かりが点いたのを確認し、漸く一同は深く息をつく。
「………ちょ、ちょっと…、あの可愛さって犯罪級なんじゃないの?」
「普段は小動物っぽくて、酔っ払うとエロいなんて有りかよ…」
「ちょっとの量であんなに酔うって、新鮮よねぇ…」
今まで見たことのない色香を纏った瑠維の姿に、小鳥遊家の面々は言葉が続かない。
「見にいこっか…」
「玲が困るトコ、見てみた~い」
「やめといた方がいいわよ」
お茶を一口飲み、母が言い切る。
「考えてみなさい。
玲を怒らせるのは簡単だけど、大きい鬼と小さい鬼が出てきたらどうするの?」
母の口から出た二人…。
言わずもがな、荊櫻と璃音のことだ。
確かにあの二人を怒らせたら後が怖い。
しんなりと眉をひそめ、寧と舞はカウチに腰を下ろした。
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