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 トクトクという命のドラムの音に包まれて、瑠維は温かい海の中にたゆたっていた。 『玲………、好きだよ…』  優しい香りを追いかけ、鼓動を確かめるように顔を擦り寄せる。 『玲…、玲…。  好きだよ………、あいしてる…』  普段は照れて言えないから、夢の中でいっぱい言いたい。  伝えきれない分、いま、玲の心に溶かし込んでしまおう…。  自分の中にある想いを…、愛情を、玲に伝えたいから…。  なんと無しに目覚めると、隣で眠る瑠維がキュウッとシャツを握ってきた。  何か夢を見ているのだろう。  とても幸せそうに口元を綻ばせている。 「…どんな夢見てんだろうなぁ…」  髪を撫で、頬を指でつついてみる。 「………んや……」  肩を竦め、擽ったがる仕草が可愛くて、もう一度つつく。 「………なんか、いい夢見てんのか? 瑠維…」  ホワホワと立ち上る甘い香り。  蠱惑的なものではなく、優しく包み込んでくる。 「…れい……好き…」  花が開くように綻ぶ唇が紡いだのは、素直な気持ちを表す言葉だった。

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