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「…ふふ……っ」  幸せそうに微笑む瑠維を、まどろみの中で抱きしめる腕…。  様々な病に脅かされる命を日々救う力強い腕。  いまは自分だけを包み込み、愛してくれる伴侶の腕だ。  引き締まった胸に擦り寄ると、想いの深さに気付いているからなと言うように、背中を撫でたり優しく叩いてくれる。  意地っ張りなところも、照れ屋なところも知り尽くしてるから、安心して寄り掛かれと。 「………玲……、好き…」 「……………ああ……」  想いに応える声も、いつもより穏やかで甘い。 「……………愛してるよ…、ずっと……、ずっと愛してる…」 「………俺もだ」  夢の中で交わされる睦言。  擽ったくて、嬉しくて。  今じゃなければ伝えられないかもしれないから、ありったけの気持ちを紡いでしまいたい。  心身も、命も、魂の隅々まで、愛しさを染み渡らせてしまいたい。  そんなふうにしか愛せないから。  自分にできる愛情表現は、きっと誰よりも少ないから…。 「………愛してる……。  愛してる………、玲……」  想いを凝縮して紡いだ。

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