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 フワリ。  意識が水底から舞い上がる。  温かで、幸せな世界から…。  ふわ。  ふわ…。  ふわ…。  引き寄せられたのは、しなやかで力強い腕の中…。 「………………っん…」  玲の情に引き寄せられ、自然に覚醒していく意識。 『まだだよ………。  俺の中の愛情を、全部捧げきれてない…。  玲に愛されて包まれた以上の想い…。  体にも、心にも染み込んだ、玲への気持ちを…。  腕を伸ばして、玲を包むよ…。  翼を広げた鳥みたいに、玲を包んで愛したいんだ…』  体の隅々、指の先にまで想いを篭めて、腕を伸ばす。  広い背中に回した腕で包み込む。  深くて、純粋で、凝縮した愛を玲の肌に伝えるために…。 「………………ん」  重い瞼があがる。  目の前にあるのは、愛おしい伴侶の胸だった。

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