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「おっ、おは、おはよう、玲っ」
「…うす」
平然とリビングを横切り、ソファに座る。
腰が立たない瑠維に気遣かっているのか、いつものような座り方ではなく、少し静かに腰を下ろした。
伴侶に凭れる瑠維の顔は、はっきりと見えない。
「咽が渇いてるだろ、なんか持ってくる」
「ん…」
そっとクッションの上に瑠維をもたれさせ、冷蔵庫に向かう。
今まで見せたことの無いかいがいしさは、兄妹たちにとって驚き以外の何物でもない。
「あ、あの…、遅くなってすみません…」
散々喘がされたのだろう。
掠れた声が痛々しい。
「いや、いいよ、気にしなくたって。
なあ?」
「そうよ。
弱いのに、お酒を飲ませた私達が悪いんだから、ねっ?」
あわあわしながら返事をすると、瑠維は申し訳なさそうに頭を下げる。
「「…………………っ!!」」
三人が絶句した。
ハラリと髪が動き、ほっそりした首筋に見てしまったのだ。
くっきり浮かぶ薄紅の歯形と、滲んだ花びら模様を。
ほんの少しだが、やつれた感も花を添え、昨夜とは違う儚げな風情の瑠維にコクリと咽が鳴った。
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