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「……………っ」
仁王立ちする玲の前に、瑠維が立っていた。
「玲。
玲が怒る理由も分かるけど、さっきのは駄目だ。
命を一番大事にする仕事をしてるのに、あんなことするのはいけない。
そんな怖い顔してちゃ、小児科の先生が出来ないじゃないか」
むにっ!!
「「は、………はい…?」」
瑠維が鬼より怖い顔をした玲の前に立ち、両の頬を指で摘んだのだ。
「…る……、瑠維……?」
一瞬で毒気を抜かれた玲が、目を丸くしている。
「玲。
煌さんは、別に俺をどうこうしようなんて思ってないよ」
「で、でもよ…」
「でもじゃない。
あんなふうにキツい言葉は投げ掛けちゃ駄目だ。
俺みたいに拗れて取り返しがつかなくなって、何年もしんどい思いとかしてほしくない。
悲しいキモチになる言葉は、自分で自分を切り付けるみたいになる。
そんなの、俺はヤだ」
「………………」
焦がれ焦がれて璃音を傷つけ、何年も後悔や自責の念に苛まれたからこそ、瑠維が紡ぐ言葉は玲の心を突いた。
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