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「龍嗣、お帰りなさい」 「ただいま」  すっかり上機嫌の璃音の額に龍嗣は口づけを落とす。 「珊瑚と琥珀の具合はどうなんだい?」 「熱も落ち着いてるし、だいぶいいみたいだよ。  お昼ご飯までの間、興奮して走り回ってた位だもの」 「そうか」  朝からの事を嬉しそうに話す伴侶なのに、何処か寂しさを感じさせる表情を読み取ったのだろう。  髪を優しく撫で梳いて、もう一度口づけを落とす。  チュ。  それだけで、璃音の中の悲しい気持ちが少し凪いでいく。 「どうしたんだい?  子守が大変だった訳じゃないんだろう?  何故涙の跡があるんだ…?」 「……………っ」  急に黙り込んだ璃音。  ゆっくり宥めるように髪を梳いてやる。 「何か辛い事があったんじゃないのかい?  言ってごらん」 「…………」 「璃音……?」  理由もなく涙を零す伴侶ではないと龍嗣も判っている。  自分が出来るのなら、璃音の中にある不安な要素を取り除いてやりたいと思うのだ。  決して強要する訳ではないが、ゆっくりと促されて重い口が開いた。

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