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「もう時間も遅いし、泊まってけばいいのに」と晶に言われたが、玲と忍はやんわり断った。
瑠維の誕生日に合わせ、車に荷物を積んでいたからだ。
ここ数日の疲れと、夕方の泣き疲れからウトウトし始めた瑠維をリアシートに寝かせ、車は水上邸を後にしたのだった。
◆◇◆◇◆
二時間程で目的地に着いた。
車から降りると、ひんやりというよりも 冴え冴えとした空気に体が強張る。
「ここ…。 県境の別荘…?」
瑠維はコクリと咽を鳴らす。
ここは、三人の関係が始まった場所だ。
嫉妬に狂って璃音を嬲ったペナルティーで初めて体を開かれ、後に求愛をされた場所でもある。
「さ、おいで」
「怖くないからさ」
二人に誘(いざな)われるままに足を進める。
「……………」
あの時から時が止まったように静かで、成長しきれていなかった心の残滓が澱のように漂っているような気がした。
どくん。
どくん。
耳の中が鼓動で煩いくらいになっている。
そして、一番奥のオーディオルームの前に来た。
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