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「瑠維、分かってるだろう?
中に入れたままだと苦しい思いをするのは自分なんだ。
聞き分けてくれないか?」
「嫌だっ。
まだ…、まだ注いでもらったばっかなのに、もう抜くなんてヤだ」
「瑠維、俺達は…」
「ヤだ。
抜くなんて許さないっ。
やっと充たされたのに、もう取り上げんの?
何で? 俺は嫌だ。 絶対ヤだっ」
「「……………」」
二人は絶句した。
瑠維がここまで強硬に拒むなんて珍しい事だ。
いや、初めてかもしれない。
いつもなら中を掻き回されてきゃんきゃん啼いて悦ぶのだが、今日に限っては嫌だの一点張りだ。
頬を膨らませて眉を八の字にし、目には涙が滲んでいる。
「「……………………」」
そういえばと思い返す。
かつての瑠維は、水上きっての我が儘プーだった。
一度決めたら梃子でも動かなかったし、主張を曲げなかった。
鬼と言われた荊櫻に叱られても、決して曲げなかったのだ。
それをいま発揮されてしまうとは、考えも及ばなかった二人。
果たして、どうやって説得しようかと思案を巡らせた。
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