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 記憶の何処かから、切なる願いが聞こえる。  あれは、誰の言葉だったろう。 『僕たちは、大事な伴侶が子供をつくるチャンスを奪ってる。  なのに、物凄く大事にして貰えてる。  だからこそ、相手が注いでくれる愛情を大事にしなきゃいけない。  伴侶から注がれる愛情がどれだけ嬉しいかって思うし、精液だって全部注がれたい。  未来に繋がる行為ではないけれど、深く愛されて注がれたなら僕らはここに有りったけの愛を孕まなきゃダメなんじゃないかって…』 「…………」  その切なる願いを口にしたのは、今の瑠維と同じ目をして訴えていた。  …璃音。  瑠維に体を奪われる数時間前に、必死で訴えたあの時の言葉だ。  深く深く愛した相手の蜜を、一滴残らず体に受け入れたい。  避妊具を使うのは絶対嫌だと懇願もしていた。  なるほど。  鬼夜叉の息子達は外見はあまり似ていないが、中身は伴侶への萌えでいっぱいのようだ。  夕食の時に鬼夜叉が苦笑いしていたのは、このことだったらしい。  好きだから、中に全部欲しい。  単純だが、あまりに深い想いに忍は頭がクラリとした。

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