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第一章・7
「あれっ?」
一大決心をして昨日の花屋『フラワーショップはた』を訪れた雪緒は、思わず声を上げていた。
店に入ると、そこにあの少年の姿はなく、代わりに40代くらいの女性がいたのだ。
「いらっしゃいませ。何にいたしましょうか?」
「あ、すみません。昨日、ここにいた男の人は……」
あら、と女性は眼を円くすると、すまなさそうに頭を下げた。
「息子が、また何か阻喪をしましたか? 申し訳ございません」
「いいえ! その逆です!」
まさか、もう一度会いに来た、とは言えないので、雪緒はお茶を濁した。
「花言葉に詳しくて。それで素敵な花を選んでいただけたので、お礼を言おうと」
「やたら詳しすぎて、ですね。時々お客様を怒らせちゃうことがありまして」
照れたような笑顔が、あの少年に似ている女性だ。
これはさすがに血筋だな、と雪緒は妙な所で納得した。
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