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第二章・2
「みんな、初めまして! 草野 順平(くさの じゅんぺい)だ。よろしく頼む!」
妙に大きな声で自己紹介をする担任は、熱血の陽キャだった。
26歳の彼は新任から4年を経ており、学級経営にも自信が付いた頃だ。
積極的に生徒と交わり、兄のように慕われるタイプだった。
ただし、一部の生徒に対してのみ、だが。
(うう。僕、こういう先生、苦手)
彼の大声を聞いて、雪緒は肩をすくませていた。
物静かで騒ぎを好まない雪緒にとって、草野ボイスは圧が強すぎた。
「では、皆にも自己紹介をしてもらおう。出席番号順に、頼む!」
自己紹介も、苦手な雪緒だ。
順に自己PRをしていくクラスメイトは、名前、部活、趣味などを語っている。
(花が好きです、なんて言ったら笑われるかも)
しかし、凌介が後ろの席に座っている。
彼の前で、花が好きな自分を主張することは良い方法だ。
僕のこと、知って欲しい。
その一心で、雪緒は立ち上がった。
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