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第三章 二人きりの沢登り
「今日は、鍛錬キャンプの班を発表するぞ!」
本日も元気な草野の声が、教室中に響き渡った。
だが、その途端に草野に負けないくらいのざわめきが起こった。
「先生、発表する、ということは、もう決定してるんですか?」
「ああ。お互いまだよく知らない者同士なので、出席順に割り振りした」
「ええ~っ!」
1年生の頃に同じクラスだった親友同士は文句を言い、生徒に任せて欲しい、と嘆願した。
だが草野は、素知らぬふりだ。
「心身を鍛えるのが目的のキャンプではあるが、知らない同士が友達になれるいい機会でもあるんだ」
まだ文句を垂れている生徒はいたが、配られたキャンプの栞を見て雪緒は喜んでいた。
(凌介と同じ班だ!)
そんな雪緒を、後ろからつついてくるのは、その凌介だ。
「やったな。よろしく頼むぜ」
「うん!」
一日中、凌介と一緒にいられるんだ……。
沢登り、登山に、キャンプファイヤー。
凌介と一緒なら、どんなアクティビティも楽しいに決まってる!
雪緒は初めて、草野に感謝した。
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