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第三章・4
鍛錬キャンプの初日から、過酷な沢登りが待っていた。
「雪緒、大丈夫か? 昨日の雨で増水してるから、気を付けて」
「ありがとう、凌介」
「わぁあ!」
「凌介!?」
派手に滑って、下半身がびっしょり濡れてしまった凌介だ。
(これは思ってたより難しいぜ)
花屋を手伝っているので、体力や腕力には自信のある凌介だったが、雪緒に気を取られるばかりに失敗してしまった。
「凌介、平気? 足くじいたり、してない?」
「平気平気。さ、早く行こうぜ」
先を行く班長の久保田(くぼた)が、やけに急かして来る。
「おーい! 早くしろよ。俺たちの班、最下位だぞ!」
解った解った、と岩を這い上がり、苔の生えた石を歩く。
意外だったのは、雪緒がそんな難所をするするクリアしていくことだ。
「雪緒、運動神経いいなぁ」
「ちっちゃい頃、ボルタリングしてたんだ。だからだと思うよ」
「へえ」
雪緒のちっちゃい頃、かぁ。
(可愛かったんだろうな。写真とか、見てみたいな)
部屋デートとかして、見せてもらいたいぜ!
そこへ、凌介の邪な妄想が湧いて来た。
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