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第五章・5
「あ~、ようやく眠れるぜ」
「忙しい一日だったね」
布団を敷きながら、凌介と雪緒はそんな会話を交わしていた。
「そして、いろんなことが、あったね」
「そうだな」
何となく相手の心中を察して、二人黙って赤くなっていた。
「皆、布団の準備はできたか!」
そこへ、担任の草野がやって来た。
(せっかく、いい雰囲気だったのによ)
憤っても、草野はマイペースに事を運ぶ。
「さあ、消灯だ。皆、静かにして寝ろ!」
「先生の声が大きすぎて、眼が覚めました~」
凌介の嫌味にも気づかず、草野は笑う。
「明日は、登山だ! 今日の疲れを残さないよう、しっかり眠るんだぞ!」
先生、と凌介が手を挙げた。
「雪緒、いや、新見くんは足をくじいてます。どうするんですか?」
「新見は残念ながら、留守番だな」
「そんなぁ」
「新見、時には我慢も必要だぞ」
そこまでで、草野は電灯を消した。
「では、おやすみ!」
ドアが閉められ、足音が次第に遠くなっていった。
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