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第六章 夜の二人
約束通り、凌介は登山中の写真や動画を、たくさん送ってくれた。
雪緒はそれらを、図書室で微笑みながら眺めていた。
「こんな急な山道、ちょっと今の僕には無理だな。やっぱり」
昨日くじいた足が、まだ少し痛む。
凌介と山に登れなかったのは残念だが、仕方がない。
「やっぱり、花の写真が多いな」
そしてそれらには、必ず花言葉が添えてある。
「シャガ・私を認めて。ヒメウズ・ずっと待っています」
私を認めて、って。
「恋人として認めて欲しい、ってことかな?」
だったらいいな、と胸が熱くなった。
「ずっと待ってるのは、僕の方なのに」
ああ、早く下山してよ。凌介。
早く帰って来て。
新しく届いた写真は、頂上の絶景だった。
新緑を見下ろす凌介を、自撮りしてある。
「ふふっ。気持ちよさそう」
登山は無理だったけど、今夜のキャンプファイヤーには参加できるかな。
いや、参加しよう!
凌介との楽しい思い出を、たくさん作りたいんだ。
雪緒の心は、すでに夜に飛んでいた。
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