40 / 61

第六章・2

 降るような星空を、赤い炎が焦がすようだ。  キャンプファイヤーは、生徒たちの心を躍らせた。 「よぉし! 歌でも歌うか!」  しかし草野が指定したのは、校歌だった。 「ったく。こんな時まで校歌かよ」 「みんな知ってる歌だから、じゃないかな?」  仕方なく校歌を歌う凌介に、雪緒は話しかけた。 「凌介は、どんな音楽聴くの?」 「ん~、洋楽。たぶん、言っても知らないよ」 「今度、聴かせてよ」 「いいぜ! 家に遊びに来いよ、な!」  愉快なお喋りをしている間に、校歌斉唱は終わってしまった。 「次は、第一応援歌、いくぞ!」  やたら張り切る草野だ。 「校歌とか応援歌とか。これじゃ学校に居る時と変わんないじゃん」 「もうすぐ高総体あるし。練習を兼ねて、じゃないのかな」  そんな雪緒に、凌介は笑顔を向けた。 「雪緒、いつも良い方に考えるんだな。いいな、そういうの」 「そ、そう?」  嬉しいな。  凌介に褒められるのは、気持ちがいいな。  熱血応援歌を歌いながら、雪緒は甘酸っぱい恋の味を噛みしめていた。

ともだちにシェアしよう!