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第七章・4
「いつまでもキャンプ気分で浮かれるなよ! 明日から、二者面談だ!」
いつもの学校、いつもの教室、いつもの草野の大声に、生徒たちはうんざりだった。
二者面談。
教師と生徒で、進路希望や成績について話し合う場、である。
「放課後、出席番号順で行くからな! 本日は、赤崎、石田、江口、木戸、久保田だ!」
やれやれ、と雑談を交わす生徒の中に、雪緒と凌介の姿もあった。
「凌介は、進路どうするの?」
「俺は花屋を継ぐよ」
「じゃあ、就職だね」
「雪緒は? 進学だろ」
「う~ん。どうしようかな」
1年の頃から、志望大学は決めていた。
それに合わせて、勉強も頑張ってきたつもりだ。
でも……。
(就職と進学じゃ、ちょっと距離が開くよね)
県外の大学へ進学すると、地元で就職する凌介とは会える機会がぐっと減る。
(こういう事情は、先生に相談するわけにもいかないし)
一応、進学希望、ということにしておこう。
雪緒は、まだ漠然としか将来を見ることができなかった。
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