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第八章 99本の赤いバラ
「雪緒、何かあったのか!?」
「……え?」
教室で雪緒を待っていた凌介は、思わず声を上げていた。
ふらふらと、心もとなく。
視線は、定まらない。
こんな雪緒を見るのは、初めてだ。
「草野に、何か酷いこと言われたのか? 志望校、絶対ムリ、とか何とか!」
「草野、先、生……」
先ほど強要されたフェラチオを思い出し、雪緒の眼から涙が零れた。
(ダメだよ、泣いちゃ。凌介に心配かけちゃ、いけないよ)
それでも涙は止まらず、雪緒は凌介にすがって声もなく泣いた。
「何があった。言ってくれよ、頼むから!」
「……動画、撮られてた。キャンプで、屋上で」
「あの時の……、草野に見られてたのか!?」
「口でしないと、拡散するって言われて。僕、僕……ッ」
「あの変態野郎!」
凌介は、雪緒に口づけた。
その咥内を舌で清め、涙を拭ってやった。
「大人の付き合いして欲しい、って」
「そこまで言うか!?」
椅子を蹴って、凌介は立ち上がっていた。
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