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第八章・2
生徒指導室には、すでに誰もいなかった。
もちろん、草野の姿も無い。
「職員室か!」
走って駆けて、凌介は勢いよくドアを開けた。
何事か、と一斉に教師たちの眼が注がれる。
その中には、湯呑片手に学年主任と談笑していた草野もいた。
「草野ォ!」
思いきり、殴った。
拳で。
がたがたと草野は倒れ、尻で張って逃げようとしたが、凌介はその胸倉をつかんでさらに数発殴りつけた。
「ひ、ッひいぃい!」
「こいつッ! この、セクハラ教師がぁ!」
よくも、雪緒を。
大事な、俺の雪緒を!
ポケットを探り、草野のスマホを力任せに床に叩きつけた。
割れて壊れた器械を、足で踏みにじって粉々に砕いた。
「波多、やめなさい!」
「一体、何があったんだ!」
そこまでで、凌介は動けなくなった。
数人の男性教諭が、腕を体を足を抑え込んでしまったのだ。
瞬く間に、大騒ぎになってしまった職員室。
他の教師に連れられ、草野はその場からいなくなった。
とにかく、波多を落ち着かせなければ、収まらない。
そう考えた、大人の知恵だった。
草野が視界から消え、ようやく凌介の荒い息遣いはゆっくりと鎮まった。
(やっちまった……)
だが、後悔はしなかった。
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