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第八章・3

「僕のせいだよね。ごめん、ごめんね、凌介」 『違うって。もともと気に入らなかったんだ、あいつ』  雪緒は夜、凌介と電話で話していた。  その日のうちに凌介の母が学校に呼ばれ、教師たちとの間で話し合いの場が設けられた。  暴行に、器物破損。  ただ、凌介の叫んだ言葉が引っかかっていた。 『こいつッ! この、セクハラ教師がぁ!』  草野が生徒の誰かにセクハラまがいのことをして、それで友人の凌介がキレた。  大人たちは誰もがそう考えたが、口にはしなかった。  当の草野も、必死で否定した。 「わ、私が生徒に、そんなことをするはずがないじゃないですか!」  冷ややかにそれを眺める、凌介。  そんな彼の頭をぐいぐい手で押して、母親はひたすら謝った。 「ホントに、申し訳ございません! ほら、あんたもちゃんと謝りなさい!」 「……」  凌介は、絶対に雪緒の名前を口にしなかった。  ゲロしたら最後、雪緒はそのことでいじめに遭うだろう。  下手をしたら、生徒から再びフェラをさせられるかもしれないのだ。 「本当のことを言えば、停学で済むんだぞ?」 「……」  凌介は、退学処分になった。

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