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第八章・4
「草野もさ、怪しい点がある、ってんで、自宅で謹慎だとさ。そのうち、他所へ追い出されるぜ。きっと」
だから、安心して学校に行けよ。
そんな風に、優しい声で凌介は言う。
だが、その声が優しければ優しいほど、雪緒の心に突き刺さる。
「凌介のいない学校になんか、行きたくないよ」
「わがまま言うなよ~」
「でも。……でもっ」
「実はさ、雪緒がいなけりゃ、中退しようと思ってたんだ」
「えっ?」
雪緒は、スマホを持ち直した。
「どういうこと?」
「うん……。去年の暮れに、母さん倒れたんだ。今は持ち直してるけど、癌、なんだ」
「凌介」
これで俺は、花屋ができる。
母さんは、治療に専念できる。
「結果として、Win-Win、ってこと! 心配すんなって!」
時々、店に遊びに来いよ、と言ってくれる凌介。
だけど、言ってくれない言葉がある。
「凌介、僕のこと好き?」
「……好きだよ」
ためらうような、間が悲しい。
まるで終わったような言い方が、辛い。
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