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4、香さんの夫

「香さん、僕そろそろ帰ります。 まだ、仕事があるので。 今日はありがとうございました」 「もう帰っちゃうのー! でもそうね仕事があるなら しかたないわ・・」 そう言いかけた時、襖から男性 の声がした。 「香、いるのか入るぞ。 あれ、君は・・」 「え、あ、僕は諒って言います。 服を造っている者で、香さん にはいつもお世話になっております」 父親以外で皇宮で働いている人を 見たことがなかった為、緊張し しどろもどろになってしまった。 「あなた、この子が奴婢の為に 服を造っているのよ」 「ああ、君が。こちらこそ妻が 世話になっているよ。妻は 君の造った服がお気に入りでね いつも身につけているよ」 「ありがたく存じます。 気に入って頂き光栄です」 父から皇宮の事はよく聞いていた。 礼儀がきちんと身に付いていない 者は棒で打たれたり、最悪の場合 牢屋に入れられる事もあるという。 その事が頭をよぎり肩に力が入る。 「そんなに堅くならなくてもいい。 君は皇宮の作法を知っている のだね。香、諒と話がしたい のだがいいかな?」 「分かったわ。諒、緊張しなくても 大丈夫よ。別の部屋に案内するわ」 そう言うと、出てすぐにある襖を 開け座るように促された。

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