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15、陛下の気持ち
皇宮殿を見た後、帰ろうとしていた
諒に、まだ見せたいものがあると
言って引き留めた。
もし、ここで諒を帰してしまったら
二度と会えない気がしたのだ。
「陛下、本当に良いのですか?
側室の方に申し訳ないです」
皇宮殿で働いていない者を
泊めることは異例であり
あり得ないこと。
しかし他の者に諒を見せたくないという
独占欲が心を支配している。
「中殿もいなければ側室もおらぬ。
跡継ぎをと言われているが
私に近く女は、権力か財力目当ての
者ばかり。純粋に私が愛しい
訳ではないのだ」
「・・陛下、そう悲観しないで下さい。
きっと素敵な方に出会えるでしょう。
陛下、あの琴で一曲弾いても良い
でしょうか?陛下に幸せが訪れる
よう願いながら奏でたいのです」
諒は琴の前に座ると、ゆったりとした
曲調のものを奏でている。
隣に座った陛下は諒の奏でている音を
聞きながら、静かに目を閉じた。
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