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GAME2
いつも明るく元気なハルくんが、ひどく思い詰めた顔をしているのを見て、一体どれだけの心配を不安を与えてしまったんだろうと胸がきゅっとなる。
だけど――。
おれが睡眠不足になった訳は、どうしても言えそうにない。そんなの絶対言えない。
「じゃあさ、とりあえずお互いに家族の連絡先教え合おうよ。ハルくんだって、この先なにがあるかわかんないし」
「うん。あと、アレルギーがあるかとか、簡単な病歴? みたいなのも知っておきたい」
「わかった。それは、あとで書くわ。ハルくんも書くんだよ?」
「わかった」
ハルくんと出会って六年。けっこう濃密な時間を共にしてきたはずなのに、お互いに相手のことをなにも知らないんだなと少しばかりショックでもある。そりゃ、ただの友人というか仲間なんだから、細かいことを知らなくても当然なのかもしれないけど、一緒に住むということは相手に対しての責任もつきまとうものなのだと今さら。おれ、もう28歳なのに考えが浅かったなぁ……。
「ところでさ。カナさん、なんで睡眠不足だったの? そんな忙しかった?」
「あ……いや、なんていうか……か、環境が変わって眠れなかった的な? うん、そういうやつ」
ハルくんは少しばかり疑わしい目でおれを見たけれど、すぐに納得して「意外と繊細なんだ?」と笑った。意外とってなんだよ。でも、まぁハルくんが単純バカで良かった。理由を問い詰められたら、うまく交わせる自信がない。それに、理由が盛大にばかばかしすぎる。
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