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GAME2
おれが眠れなかった理由。それは端的に言えばハルくんのせいだ。厳密には少し違うけれど、ハルくんがいるから眠れないというか、なんというか……。
ハルくんと一緒に住んでいるこの部屋は4LDKで、実況部屋、編集部屋、そしておれとハルくんの個室に分けられている。おれとハルくんの部屋は廊下を挟んで向かい合わせ。音が筒抜けというわけではないけれど、大きな音をたてれば聞こえてしまうような距離間だ。
マンションに越してきて、今日で十日目。この十日の間、おれは性欲処理が出来ていない。いや、もう……ほんと自分でも頭悪いと思うんだけど、ハルくんに聞こえるかもしれないとか、今ハルくんが部屋に入ってきたら……とか思うと、どうしても出来なくて……かといって溜まるものは溜まるから、ハルくんが寝てしまってからと、いつもハルくんが寝るのを待っていたんだけど、本当に眠っているかどうかわからないし、ハルくんが寝るのを待って『そういうこと』をしようとしている自分が物凄く浅ましい人間にも思えてしまって――結局、悶々としながら朝を迎える日々が続いたのでした。
つまり無意味な禁欲生活がおれの睡眠を妨げ、気付けば約一週間もの間、まともに寝ていなかったというね……こんなしょうもない理由でハルくんに多大な心配をかけてしまったなんて、とてもじゃないけど言えるわけがない。
だけど、これからもハルくんとの日々は続いていくわけで、これが後々、大変な事態を招くことになろうとは、この時のおれには知る由もないことだった――。
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