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14 明砂(Aug.17th at 11:24)

 30分程が経ち、怜が一人で、部屋に入って来た。  意外に早い到着を怪訝に思いながらも、明砂はベッドから立ち上がり、弱々しく微笑む。 「ご免ね!…俺、知らなかったんだ。…君がこんな事になるなんて!」  開口一番に謝罪し、泣きそうな怜の顔を見ると、明砂は疑うことを忘れた。 「…怜君、来てくれたんだ。…悪いけど、家まで送ってもらえる?」  ほっとした明砂に、怜は表情を一転させ、傍へ迫って来る。 「説明、聞いてないの?俺と君は、これから番になるんだよ。そうしないと、君はここから出られない。」  いつもの温和で何でも相談にのってくれる怜とは別人のように感じ、明砂は彼との距離を取る。 「…ツガイって何?…なんで出られないの?そんなの聞いてないよ!」  怜は近付けば明砂が逃げる為、その場に踏み留まった。そこで大きく鼻から息を吸い込み、笑みを見せる。 「君がΩで、発情してるからだよ。…初めて嗅ぐ甘い香りが、君から漂ってくる。これがΩのフェロモンって奴なんだな。」 「どういう事?…怜君が何を言ってるのか、分からない。」  今度は明砂が泣きそうな顔になる。 「頭で理解できないのなら、体で理解してみればいい。ほら、俺からも何かを感じない?」  また怜は一歩、明砂に近付いた。明砂は過剰に反応して、数歩後退る。 「…治験の、あの薬の所為なの?」 「さあ、それは聞いてないけど…。ねぇ、もっと近付いてもいい?」 「ダメ…!なんか変だし…。」  怜は言う事を聞いてくれず、明砂は壁際まで追い詰められた。  怜を見上げると、彼の唇が明砂の唇に重なった。驚いた隙に、容易く舌を割り入れられる。  深く、長く絡め取られ、それを嫌じゃないと、許そうとしている自分が嫌で、明砂は首を背けて拒絶した。 「こういうキスは初めて?」 「…だったら、何?」  身を躱して逃げようとした明砂だったが、敢え無く捕まると、ベッドの上に乱暴に押し倒されてしまった。 「やめてよ!こんな事、…許されない!」 「許されるよ。これは政府も認めている事なんだから…。ほら、どうする?…俺の事、欲しいよね?」  怜から漂う危険な香りを感じた明砂は、力が入らなくなった。それでも気持ちは抗う。 「…欲し…くなんかない…!」 「素直じゃないな。…全身で俺を誘ってるくせに。」  バスローブが(はだ)けられ、明砂の前が全て露わになったが、幸い勃起はしていなかった。 「誘ってない…。見て分かるでしょう?」  否定する明砂の白い肌を、怜の両手が堪能していく。 「どうかな?…よく確認させてよ。…匂いは、さっきよりも濃くなった気がするけど、ここが反応してないって言いたいんでしょ?」  明砂の肌に鼻を寄せながら、怜の片方の手が、明砂の中心で項垂れたものに辿り着く。先端を優しく撫でられると、それは少しだけ固さを増した。 「あ…あっ…そこ…やッ…!」  絶妙な加減で、執拗に先端の同じ場所を擦られる続けると、明砂は喘ぐような声を上げ始めた。 「どうして?」 「さっき、出したばっかりだから…。」 「…俺を待てなかったんだね。悪い子。」  抵抗したいのに出来ない明砂は、息を荒くしながら、その愛撫に堪える。敏感になっている明砂の先端に、今度は怜の舌が刺激を与え始めた。  その攻めに、目を閉じて耐え忍ぶ明砂だったが、限界を超えてしまったのか、射精を伴わずに長い絶頂を味わった。 「大丈夫?…もっと凄いコトが、これから起こるのに。」  息を乱しながら、明砂は問う。 「…ツガイになるって、…セックスする事なの?」 「そうだよ。」  怜は無慈悲に囁くと、着ていた衣服を脱ぎ出した。インドア派のイメージを覆すような、筋肉質で、引き締まった体をしている。 「それ、愛し合ってる人同士じゃないと、いけない事だよね。…怜君はいいの?」 「意外と冷静だね。…俺はね、明砂君。ずっと前から、君の事が好きだったんだ。将来、結婚したいくらいにね。」  怜の告白に、明砂は嬉しいような怖いような感覚に、心を震わせた。 「明砂君は俺の事、嫌い?」 「嫌い…なんて、思った事ないよ。寧ろ好きだし…。でも、好きの意味が違うんだ…。」  裸の怜が明砂をベッドから掬い上げ、きつく抱き締める。 「じゃあ、これから好きの意味を変えてよ。」  二度目のキスを受け、明砂は段々絆されていく。  しかし、臀部の奥に怜の指が辿り着くと、明砂は体を固くした。 「そこは、無理!怖い…!」 「すぐ慣れるよ。…だって濡れてるし、沢山、溢れて来る。分かる?」  怜の指を受け入れると、明砂の中で何かが変わった。  先程、ドライで達したばかりの明砂の体は、貪欲になってしまったように、それを咥え込む。  異物の侵入は痛い筈なのに、それを超えて這い上がって来る、まだ知る事のない快楽を待ち望んでいるのだ。  明砂はいつの間にか俯せにされ、腰を上に引き上げられた恰好で、怜に体を預けていた。  次第に怜からも、激しい息遣いが洩れ聞こえるようになった。 「もう、こっちの抑制が効かなくなってきた。…こんな感覚、初めてだよ!ご免ね、明砂君!」  突如、明砂は自身の体が引き裂かれたような痛みを味わった。 「…い…あッ!」  短い悲鳴を上げながら、明砂は怜の性器に穿たれた事に気付いた。 「痛いよね?…でも、痛みだけじゃないでしょ?」 「嫌だ、抜いて!…お願い、怜君!」  後ろから激しく突かれ、明砂は顔を伏せたまま懇願した。 「こうなったら、もう抜けないんだ…。君の中に出して、出して、出し尽くすまで、終わらない…!」  抽挿を連続すると、次第に明砂が受け入れてくれる感覚に、怜は気付いた。 「明砂君、有難う…!」  一際大きな突きを繰り出すと、怜は明砂の首の後ろに噛みついた。  そして、皮膚に歯を食い込ませながら、断続的に何度も何度も、数回に渡り、明砂の体内に射精し続ける。  明砂の予想をはるかに上回る量だった。  それを注がれながら、明砂はこの上ない快楽に酔いしれる。 「このまま、ずっと…抜かないで…。」  先程とは真逆の言葉で、明砂は怜を煽った。だが、それは熱に浮かされた状態の譫言で、意図して言ったものではない。  ただ甘美な波を、その身に受け続けたいだけなのだ。  そして、明砂は何度目かのドライの後、もう出せないと思っていたそこから、精子とは違うものを迸らせると、意識を手放したのだった。

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