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序奏(4)

 彼らは一族にして妖力は最強クラスだった。  そうして彼らは力が使えない古都の傍らで常に寄り添い、守っていたのだ。  だから神楽は、従順な振りをして古都の傍に寄り添い、守りが薄くなった機会を経て、父と母の命を奪った。  妖狐の守りが薄くなったそもそもの原因は、妖狐族の結婚にある。  妖狐族の結婚というものは、人間とは違い、それぞれに決まった花嫁が、この世に生を受けた時から定められている。  その定めにより、成人を迎えた妖狐は、それぞれ自分の花嫁を探すため、故郷から離れる。  花嫁探しは、わずか数年で終わる者もいれば、百年もの歳月をかける者もいる。  それだけ、花嫁探しは困難を極めるのであった。  その花嫁探しで、妖狐族が村を留守にする時を見計らい、神楽は両親を手にかけた。  暁が、両親が亡くなった知らせを受けた当時は、神楽を許せないほど憎んでいた。  だが、父と母は神楽に殺されなくとも、いつかはこの世から去っていく存在であることも事実だった。  沈着冷静な暁自身、実は神楽の企みに全く気づいていないということはなかった。  暁が両親から離れなければならなかった理由は、使命があったからだ。  暁は花嫁探しと称して、祇王が亡くなる一年前に、言伝(ことづて)を受けていた。

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