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邂逅(7)

 紫苑と対面した男の大きな口から、はみ出た長い舌には(よだれ)が伝っている。  ギョロリと覗く大きな充血した目。本来白であるはずの結膜は血走っている。  それは、この人間の恐怖を喰っている何よりの証拠だった。  正直、紫苑にとって、人間は見苦しい生き物だと認識している。  だが、醜態を見せる、この悪魔とて同じようなものだった。 『この地に住まう者はみな汚れている』  それが彼の長すぎる年数を生き抜き培ってきた経験だった。 「何とか言ったらどうだ、ああ? 人間風情が!! その綺麗な顔をズタズタにしてやろうか?」  男はどうやら、女の感情を喰らいすぎてアドレナリンが噴出しているようだ。目の前にいる紫苑も自分と同じ悪魔だということに気づいていない。 (このぼくが、此奴と同じ悪魔だと? ふざけるな! ぼくはこんな間抜け共とは違う!!)  紫苑は、自らの思考に苛立った。 「お願い! 助けて!!」  女は、そんな紫苑の背中にしがみつき、助けを求めるものだから、彼の機嫌はさらにも増して悪くなる。 「騎士気取りかい? いいご身分だな、おい?」  男は、澄ました顔でこちらを見据える紫苑をいたぶるのも悪くはないと思った。  そしてその後、恐怖で埋まった女の魂をいただこうかとも考える。  ――いや、それよりも……と、男は、目前にいる人間二人を物色するように、隅々まで舐めまわし、考える。  今夜の獲物は恐ろしく上玉だ。魂をいただくのは、この二人を犯してからでも遅くはないかもしれない。

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