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邂逅(13)

「ひいっ! 化け物!!」  静寂が戻った中、だが、それを破る者がいた。  その悲鳴は、紫苑のすぐ背後にあった。  それは、つい先ほどまで、悪魔から逃れるため、紫苑を盾にした女だった。  ――だが今はどうだろう。  過程はどうであれ、結果として女を助けたことになった紫苑に礼も言わず、彼を化け物扱いする。人間とはつくづく自分勝手な生き物だ。 (反吐(へど)が出る!)  邪魔な悪魔共を葬り去ったというのに、彼の苛立ちは消えるどころか募る一方だ。  女は紫苑を化け物だと(ののし)り、耳障りな悲鳴を上げている。  女の浅はかな言動で苛立ちの炎をふたたび灯らせることになった紫苑は、振り返り、目障りな女の方へ歩み寄る。 「ひいっ、お願い殺さないで!! 何でもするから。あ、そうだわ、パ……パパにお願いすればお金もたくさん用意してくれるわ。あたしから頼んであげるからっ!」  女は、背後にあった木に行く手を阻まれ、最早、紫苑からは逃げられないと判断したのだろう。華奢な身体を震わせながら、命乞いをはじめた。 (くだらない。まったくもってくだらない……)  紫苑は女の命乞いに聞く耳を持たず、距離を縮めていく――。  女は何を言っても無駄だと悟ったのだろう。ややあって震える足を動かし、紫苑から逃亡を図る。  だが――遅い。  紫苑は女との間合いを一気に詰めると、か細い首を片手で軽々と掴み上げた。 「う……っ」  女の足が地面から離れる。

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