24 / 45

邂逅(16)

 そして今度こそ、鋭利な切っ先が紫苑の左脇腹に見事命中した。  激痛が彼を襲い、ナイフに貫かれた脇腹は、着ていた真紅のベストをさらに真っ赤に染まらせていく。 「きっさまあぁぁぁあああああっ!!」  今まで、紫苑を葬ろうとやって来た連中はいたものの、彼を戒めたあの憎き両親以外に傷つけられた経験はない。プライドを傷つけられ、彼は怒った。  左脇腹に刺さったナイフを引き抜けば、彼の体内を巡っていた真紅の血液が、傷口から外に向かって流れ出ていく。  その光景が、彼の怒りをさらに増幅させた。  彼の怒りは最早、抑えきれるはずもなく、体外に流れる血液と同じように、魔力も周囲に流れはじめる。  紫苑の魔力は轟々(ごうごう)とうねりを上げ、林全体を覆うようにして蜷局(とぐろ)を巻く。そしてそれは恐ろしい爆風を引き起こした。  そんな中、怒り狂う彼の前に、静かにやって来る足音がふたつ。  その足音は紫苑の目と鼻の先で止まった。  紫苑は、自分を傷つけた輩が何者かを知るため、目を凝らす。  ひとりは、紫苑と同じくらいの身長で、襟足までの短い黒髪。一重の目は髪同様の黒を成していた。黒いコートに身を包んでいる所為(せい)なのか、まるで黒豹(くろひょう)のようにも見える。  そして、もうひとつは……と、紫苑は、もうひとりの敵に視線を向けた。

ともだちにシェアしよう!