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邂逅(15)

 いや、それも違うだろう。銀製のナイフ。アレは物質的にはなっているものの、魔力を具現化させたものだ。でなければ、ナイフからは魔力や殺気を感じることはないし、()してや、悪魔の超視力を以てしても、攻撃の相手を見つけることが出来ないということもあるはずがない。  そして何より、遠距離の中で、小さなナイフを硬い幹や地面に刺せるほどの力は人間にはない。 (悪魔か、あるいは、ぼくと同じような種族か……そんなところか)  紫苑は、この攻撃が何処(どこ)からきているのかを探り当てるため、未だに攻撃を仕掛けて来るナイフの出所を探った。  しかし、ナイフの発生場所がなかなか掴めない。  どうやら相手も恐ろしいほどの手練らしい。うまく魔力を隠し、紫苑に悟られないよう、移動しながら攻撃を仕掛けてきている。 (いまいましい低俗風情が!!)  紫苑の苛立ちは、極限に達してしまった。感情が露わになった瞬間、彼の意識は怒りに乗っ取られ、動きが鈍くなった。  生まれ出たその隙が、致命傷になってしまった。四方八方から飛び込んでくるナイフが、紫苑の右足を掠め取った。  相手はどうやら、極端に短気であるという悪魔の性質を熟知した上で、こういった策略に出たらしい。今更ながらに紫苑はそれを思い知った。 (くそっ!)  姿を見せない相手からの度重なる攻撃により、紫苑が体勢を崩した直後、空気を裂く音がまた聞こえた。

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