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邂逅(19)

(二)  (あかつき)は、怒りを露わにしている悪魔を見つめていた。  “祇王(ぎおう)の亡骸が消えた“生成(きなり)が家にやって来て数分後、恐ろしい魔力を感じて、(わず)か数キロ離れた自宅からこの地に降り立った矢先に、悪魔が人間の女性の息の根を止める寸前だった場面に出くわした。  ――果たしてこの悪魔が亡き父である祇王の墓を荒らし、亡骸を食らったのだろうか。  たしかに、目の前にいる悪魔は尋常ではない魔力を所持している。父の亡骸を喰らい、魔力を増幅させたとしか考えられない。  いかにも品がありそうなこの悪魔が、ハイエナの如く、祇王を食したのだろうか……。  暁は恐ろしい魔力のうねりを上げている悪魔を見据え、どのようにして戦闘を繰り広げていこうかと算段を立てはじめる。  それというのも、この悪魔の魔力と暁の妖力がほぼ互角だったからだ。下手をすればこちらが消されてしまう可能性がある。  暁の隣には仲間の生成がいるものの、彼はあくまでも墓守役で、暁ほどの妖力は持たない。  生成に助け舟を出したところで、コンビネーションが成り立たなければ足を引っ張り合い、返り討ちにあうことは必定だ。  それにしても……と、暁は、この世の美を追求し得たかのような美しい悪魔をマジマジと見つめた。  アメジストのような艶のある紫の瞳に、肩まで伸びている燃え上がる情熱の炎のような長い赤の髪。真紅のベストやノータックパンツは派手で、趣味を疑うようなものであるにも関わらず、目の前の悪魔は優雅に着こなしていた。

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