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邂逅(23)
それは暁だけではなく、今拳を重ねている相手にも暁の香りは届くはずだ。
しかし、麝香を放つ悪魔の神経は荒れ狂い、馨香を香るどころではないようだ。
これは絶対的な暁の不利となる要素だった。
――それにも関わらず、暁が遠距離で戦う蹂躙戦 ではなく、接近戦を選んだのは、単に悪魔の攻撃が素早いから対処できなかったというわけではない。
暁が動かない理由、それは――……。
「狐が妖力を持ち、進化しただけの妖狐族風情が、このぼくに刃を向けてきたこと、後悔させてやるっ!」
悪魔は暁に受け止められている手とは反対側の手にも拳をつくり、暁の鳩尾を狙う。
むろん、暁は悪魔の攻撃をむざむざ食らうことはない。悪魔からの二度目の攻撃も受け止めた。
(これで身動きは取れない)
暁は、内心ニヤリとした。
――そう、暁がこの悪魔と接近戦にした理由は、まさにこのためだったからだ。
地面に倒れている瀕死の彼女を、悪魔から距離を置くそれこそが暁の目的だった。
「生成、彼女を蘇生させるのに安全な場所へ連れていけ!!」
暁は、後方で構えの姿勢をとっている生成に吠えた。
すると、生成は暁の意図していることを理解したようだ。力なく大地に横たわる彼女に駆け寄り、脇に抱えた。
「若様!! 若様はどうなさるおつもりですか!!」
彼がそう言った頃、すでに彼女が倒れていた場所は空になり、交差する木々の枝に飛び移っていた。
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