35 / 45
邂逅(27)
紫苑は痛みを堪えながらも、どうにかしてこの体勢を元に戻さなければと必死に考えていた。そんな時だった。
自分を組み敷く妖狐が、紫苑の細い首筋に噛み付いてきた。
「……っ!!」
妖狐は紫苑に若干の痛みを与えてくる。
だがこの行為はなぜか紫苑を傷つけるだけが目的ではないような、そんな気がした。
「はなせっ!!」
今までに経験したことがないこの行為に危機感を覚えた紫苑は、必死に身体をくねらせ、妖狐の腕から逃れようとする。
しかし、魔力が思う存分に使えない今の紫苑では逃れることすらできない。
その間にも、抵抗が困難な紫苑の首を噛み続ける。妖狐はまるで人間の血を吸うヴァンパイアのようだ。
しかし、この妖狐の動きはソレとは違った。
か細い首筋を噛んだ歯の隙間から、舌が現れ、紫苑の首筋を撫でたではないか。
しかも妖狐の動きは止まらない。
ざらついた舌が紫苑の肌を味わうように舐め、薄い唇が肌を吸う。
リップ音が紫苑の耳孔に聞こえてくる。
「んっ……」
舐められ、吸われ――繰り返されるその行為。
その感覚は紫苑に不快感を与えるどころか、疼きをもたらしてくる。
(なんだ……これ……)
まるで紫苑を食すように吸い付き、ざらついた舌で舐められれば、ジクジクと疼く鳩尾が少しずつ熱を持ちはじめる。
「や、やめっ!!」
紫苑はこれまでに感じたことのない感覚に戸惑い、今まで以上に身体を捩って自分を組み敷く妖狐から逃れようとする。
ともだちにシェアしよう!