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邂逅(30)

 次に、惑的な肌が覗く胸元をさらに広げようと、シャツごとベストを()ぎ取った。  滑らかな陶器の肌に乗るそこは、まるで赤い小さな花の蕾のようだ。呼吸をするたびに、ふたつの蕾は上下に揺らいでいる。  その姿はまるで暁を翻弄するかのようだ。 「美しい……」  暁は呟くと、柔肌の上で踊る蕾の一粒に唇を寄せ、吸い付いた。 「や……ヤメロッ!!」  蕾を甘噛みしながら、歯の隙間から舌を這わせて舐めるたび、組み敷いている悪魔の腰は小刻みに跳ねる。  嫌がる姿もまた淫猥で美しい。暁はさらなる欲望を募らせていく……。 「んっ、あっ!!」  紫苑は、羞恥でいっぱいだった。  まさか、自分と同性の相手に胸元を開かせられ、胸を愛撫されるとは思ってもいなかった。しかも、である。女性とは違って膨れてもいないそこは男にとってはただの飾りにすぎない。それなのに飾りを弄られて感じるなど、もってのほかだ。 (なぜだ!?)  困惑しているのに、自分を愛撫する彼の舌や甘い香りで思考する能力は削られていく。  女のように喘ぐ声など出したくはないと思うのに、それさえも抵抗できない。 「はなせ、いやだっ!!」  こんな自分など知りたくもないし、見たくもない。  紫苑は首を振って必死に甘美な誘惑から遠ざかろうとした。  しかし、自分を組み敷く妖狐は紫苑を追い込む。  紫苑の両手を拘束していた手が彼の赤い蕾にあてがわれた。 「んっ、ふっ」  蕾を摘まれ、指で押しつぶされる、コリコリという音が紫苑の耳を襲う。

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