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第4話・潜闇(1)

(どういうことだ!!) 「あなた!」  人間界にある、虚無という闇が永遠に続く洞窟。  数千年前、陰陽師と一匹の狐に深手を負わされた彼は、ふたつの強大な力を感じ取っていた。  ――いや、自分だけではない。  どうやら彼女も魔力を感じたようだ。  漆黒の闇が続くこの場所は、この場にいる誰も表情を伺うことは困難だ。――にも関わらず、彼の隣にいる彼女がうろたえていると察したのは、か細いヒステリックな声が震えていたことと、彼女の取り巻く魔力が毛穴から吹き出し、この洞窟を包んでいたからである。 「どういうこと? あの時、たしかにアレの息の根を止めた……。それにあの強力な魔力は何? アレと殺り合える者がまだこの世界にいるって言うの?」  彼女が臆するのも無理はない。  なにせ、今まさに感じている強大な魔力のひとつは間違いなく彼が闇へと葬り去った者なのだ。 (アレが生きているとなれば……)  彼は彼女が怯え、隠れ住む洞窟を力あるものに見つけられることを防ぐため、彼女のむき出しになっている細い背中を撫で、落ち着かせる。 「どうやら、奴は俺の想像を越えた魔力をもっていたんだろう」  言葉も冷静に放つ彼だったが、内心は合を煮やすほど苛立っていた。  彼が苛立つ理由――それは、彼が今まさに、新しい最も強力な力を手に入れる寸前だったからだ。

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