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潜闇(2)

(今は奴に見つかるわけにはいかない)  憎きあの狐と陰陽師に付けられたこの傷を、是が非でも癒さなければならない。  しかしそれも今まさに新しい強力な力を手に入れることになる。  そうすればこの深い傷も癒え、それどころか全宇宙を手に入れることは必定だ。  たとえ、アレが生きていたとしても、アレと渡り合うほどの実力を持ったモノが現れようとも、だ。  彼は噛みしめた口の広角を上げ、目の前に点在するを見下ろした。  アレは今、自分を殺そうとした俺をさぞや憎んでいるだろう。  なんとしてでもこの新たな力を一刻も早く自分の物にし、アレらに見つかる前に息の根を止めてしまわなければならない。 「いるかしら?」  彼に慰められ、恐れをいくらか振り払った彼女は、彼の考えを読み取ったようだ。  両手を鳴らして(しもべ)を呼んだ。  彼女が鳴らした乾いた音は洞窟の中で薄気味悪く反響する。彼女の呼びかけに応じた僕達はぞろぞろと黒い塊となって集まりだした。 「お前達、今から言う者を見つけ次第殺しなさい。見た目、年の頃なら17。我らで言えば、1000ほどではあるが、さほど歳はいっていないように見えるだろう。深手を負ったまま身を隠し逃げ続けていた者だ。おそらくは、魔力を抑える術を持っているだろう。だが魔力は桁違いに高い。油断はするな。髪は真紅。瞳は紫。探しなさい。我らに仇為す悪魔を――」  彼女が手を掲げると、彼らは進み出す。

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