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潜闇(3)

「30匹か。高度な力はないが、アレの力をそぎ落とすことは可能だろう」  けっして名案だとは思えない彼女の思考。  しかし、今の自分達にはこれくらいしかできないことが、プライドが高い彼にとって面白くもなんともない。  彼は鼻を鳴らし、彼女の華奢な身体を引き寄せた。 「それでダメならまた僕を向かわせればいいわ。代わりはたくさんいるのだから」  これこそが、彼女の持ち得る力だった。彼女は人間だけではなく、同族の悪魔さえも魅了し、自分の操り人形とさせる能力を持っているのだ。  やはりこの女を伴侶としたのは間違いなかった。  これでいまいましい傷を消し、目の前に転がっている絶好の馳走に手を伸ばすことができる。  彼は彼女のしなやかな肌を味わうように撫で、甘い息ごと彼女のふっくらとした唇にかぶりついた。 【潜闇・完】

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