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第5話

「高林も、なかなか出来ない経験つめて良かったろ? 俺も結構楽しませて貰った。俺の話は終わりだから……頭に来たならここに置いてけ」 「内田さん、嘘吐いてる」 「え?」  思いも因らない彼の返事に、上擦った声が出てしまう。 「だって内田さん、俺のこと好きだから」 「……何言ってんだ? お前とはただのセフレだ。飽きたって今言ったろ」  不愉快そうな表情を作ってそう答えると、壮一は助手席のドアを開こうと指を伸ばした。 「駄目だよ内田さん」  するとカシャっと音が聞こえ、運転席から集中ロック掛けられたのだと気付いた時には、背後から伸びた腕の中へと囚われてしまっていて。 「嘘ですよね?」 「離せ。お前なら後腐れ無いと思ったのに……とんだ誤算だ」  憎々しげにそう告げながら、振り払おうと身体を捩ると、あっさり腕が離されたから壮一は内心ホッとした。  だけど、次の瞬間襲った痺れに声を上げて飛び跳ねる。 「いぃっ!」 「転勤の辞令出たから、こんな事になるんじゃないかと思ってたんだ」 「おまっ……なにっ……」  マフラーを外し襟足辺りをさすりながら彼を見ると、スタンガンを持っているのが目に入ったから驚いた。 「じゃあ、三年間も奉仕したんだから、最後に俺の言うこと聞いてくれますか? 」 「そんな、出来る訳…… 」 「いいじゃないですか。それで全部精算できるんだから…… って言っても、これじゃ脅しですかね」  顔の近くまでスタンガンを近付けられ、避けようとして少し下がると、空いている手が胸倉に伸びる。 「…… 分かった。好きにしろ」  ありえない行動に出た光希に怖じ気づいたのもあるが、最後なのだから彼の好きなようにさせても良いと決断した。  抱かれてしまえば気持ちはきっと揺らぐだろうが、これで終わりだと彼が言うのならば、きっと約束は守るだろう。  ――いつかはきっと、忘れられる。 「いいんですね」  いつもの屈託のない笑顔とは正反対の表情に、背筋がゾクリと冷たくなるが、精一杯の虚勢を張って壮一は「ああ」と、小さく頷く。 「じゃあ服を脱いで」 「……え? 」 「上だけでいいから全部。何でもするんだろ 」  内容は勿論だけど、言葉遣いが変わったことに驚いた。  目を見開いて固まっていると、発光させたスタンガンを光希がこちらに向けてくるから、壮一は慌てて着ているコートのボタンに指を掛ける。

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